98.「言葉と心の架け橋」


2025.07.10 |投稿者:神内秀之介

介護の現場で、ミドルマネジャーが果たす役割は多岐にわたります。利用者さんへのケアの質を高めるためには、現場を支えるスタッフ一人ひとりとの関係づくりが欠かせません。特に、部下との信頼関係を築くためのコミュニケーションは、チームの結束力を高め、働きやすい環境を生むための重要な要素です。しかし、日々の忙しさの中で「どう言葉をかけたらいいのか」「どう信頼を深めたらいいのか」と悩むこともあるかもしれません。ここでは、哲学的な視点を取り入れながら、部下との信頼関係を築くためのコミュニケーション術をご紹介します。

  1. 傾聴――「耳」だけでなく「心」で聴く
    哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「理解は耳を傾けることから始まる」と語りました。部下との信頼関係を築くには、まず相手の話を丁寧に聴く姿勢が欠かせません。

たとえば、部下が仕事の悩みや不満を口にした際、途中で口を挟まず、相手の言葉にじっくり耳を傾ける。そして、「それはどう感じたのか?」「もっと詳しく教えてくれる?」と寄り添うような質問を投げかけることで、部下は「自分の意見や気持ちが大切にされている」と感じます。傾聴とは、相手の存在そのものを尊重する行為なのです。

  1. 共感――相手の感情に寄り添う
    哲学者エマニュエル・レヴィナスは、「他者を理解することは、その存在に寄り添うことだ」と述べました。部下と信頼関係を築くには、相手の感情や立場に共感し、寄り添う姿勢を見せることが重要です。

たとえば、部下が「仕事がうまくいかなくて悩んでいる」と話したとき、「それは大変だったね」「私も経験があるけれど、確かに辛いよね」と相手の感情を受け止める言葉を伝える。共感を示すことで、部下は「この人は自分を理解してくれる」という安心感を抱きます。共感は、心と心を繋ぐ架け橋です。

  1. 具体的なフィードバック――「認める」と「導く」のバランス
    哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「他者を認めることが、その人の可能性を引き出す」と語りました。部下とのコミュニケーションでは、具体的なフィードバックを通じて、相手の努力を認めながら成長を促すことが大切です。

たとえば、「先日の記録、利用者さんの気持ちをよく汲み取れていて素晴らしかったよ」といった具体的な褒め言葉を用いる。また、改善が必要な点があれば、「こうするともっと利用者さんに伝わりやすくなるかも」と建設的なアドバイスを加えることで、部下が前向きに取り組めるように導きます。「認める」と「導く」のバランスが、信頼と成長を生むのです。

  1. 自分を見せる――「人間らしさ」を伝える
    哲学者マルティン・ブーバーは、「人と人の本当の関係は対等である」と語りました。上司として完璧であることを装うのではなく、自分の人間らしさを見せることで、部下との距離を縮めることができます。

たとえば、「私も新人の頃は失敗ばかりだったよ」「この仕事、大変だよね。でも一緒に乗り越えよう」といった、自分の経験や気持ちを共有することで、部下に「この人も同じように悩み、成長してきたのだ」と伝わります。上司としてではなく、人としての姿を見せることで、信頼と親近感が生まれます。

  1. 対話を続ける――信頼は積み重ねの中で生まれる
    哲学者ソクラテスは、「対話は理解と成長の源である」と述べました。信頼関係を築くには、単発のコミュニケーションではなく、日々の中で対話を積み重ねることが必要です。

たとえば、忙しい中でも「最近どう?」「困っていることはない?」と気軽に声をかける時間を作る。そして、日常の中で小さな話題を共有し、部下が気軽に話せる雰囲気を作ることで、信頼の土台を強固にしていきます。対話の積み重ねが、深い信頼の基礎を作ります。

まとめ
部下との信頼関係を築くためのコミュニケーション術は、「傾聴」「共感」「具体的なフィードバック」「自分の人間らしさを見せる」「対話を積み重ねる」という5つのポイントに集約されます。それは、単に仕事を進めるためだけでなく、信頼と安心感を土台にしたチームづくりを可能にします。


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