97.哲学的視点で育む未来のケアリーダー


2025.07.09 |投稿者:神内秀之介

介護現場において新人を育てることは、単なる知識やスキルの伝達に留まらず、「利用者さんの笑顔を支える次世代のケアリーダーを育む」という大きな使命を担う営みです。しかし、新人教育には「どう教えればいいのか」「どうフォローすれば成長を促せるのか」といった悩みがつきもの。そこで、哲学的な視点を取り入れながら、新人教育で気をつけたいポイントをご紹介します。新人が気持ちよく学び、成長できる土壌をチームで一緒に作り上げましょう。

  1. 「教える」というより「共に考える」姿勢を持つ
    哲学者ソクラテスは、「対話と問いかけを通じて、人は自ら学びを深める」と説きました。新人教育の場でも、一方的に教え込むのではなく、新人自身が「なぜこうするのか」を考えられる環境を作ることが大切です。

たとえば、「この場面でどのように声をかけるべきだと思いますか?」と問いかけたり、「この方法でやると利用者さんはどんな気持ちになるでしょう?」と新人の意見を引き出してみる。こうした対話を通じて、新人はただ手順を覚えるだけでなく、自分の頭で考え、主体的に行動する力を身につけていきます。共に考えるプロセスが、新人の学びを深めます。

  1. 新人の「ペース」を尊重する
    哲学者ジャン=ポール・サルトルは、「人間はその人自身の自由と選択で存在を作り上げる」と述べました。新人教育においても、教える側のペースを押し付けるのではなく、新人の理解度やペースに合わせた指導を行うことが重要です。

たとえば、「この業務は少し難しいから、まずはこの部分から始めてみましょう」と段階を踏んで進めたり、分からないことがあればすぐ相談できる雰囲気を作ることで、新人が不安を感じずに学べる環境が整います。焦らず一歩ずつ、新人自身の選択を尊重しながら伴走する姿勢が、新人の成長を支える土台となります。ペースを尊重することで、安心感とやる気が生まれます。

  1. 失敗を「成長の種」として捉える
    哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「困難や失敗こそ、成長への扉を開く」と説きました。新人が失敗した際に、それを責めるのではなく、そこから学びを得られるようサポートすることが教育の重要な役割です。

たとえば、新人がミスをした場合、「何が原因だったと思う?次にどうすれば防げるかな?」と一緒に振り返る時間を持つことで、失敗を前向きな経験に変えることができます。また、「失敗をしてもそれを次に活かせばいい」という安心感を与えることで、新人の挑戦する気持ちを育てることができます。失敗を「成長の種」として捉える視点が、新人の可能性を広げます。

  1. 「褒める」ことを忘れない
    哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「大きな成果は小さな成功の積み重ねから生まれる」と述べました。新人の成長を促すためには、小さな成功や努力をしっかりと認め、褒めることが欠かせません。

たとえば、「今日は利用者さんに自然な笑顔で接することができていましたね」「この記録の書き方、分かりやすくてとても良いです」と具体的に褒めることで、新人は「自分のやっていることが正しい」と自信を持つことができます。新人が自分の成長を実感することが、次の仕事への意欲を引き出します。褒めることは、新人のモチベーションを高める最高のツールです。

  1. 「チーム全体」で支える
    哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「人間は対話と関係の中で成長する」と語りました。新人教育は、指導役一人で抱え込むのではなく、チーム全体でサポートし合うことが効果的です。

たとえば、先輩スタッフ同士で新人の現状を共有し、それぞれが得意分野で新人を支える仕組みを作る。また、新人が困っているときに誰でも気軽に相談できる雰囲気を作ることで、孤立を防ぎ、職場全体で成長を支える文化が育まれます。チーム全体で支えることが、新人の安心感と職場への信頼を育てます。

まとめ
新人教育のポイントは、「共に考える」「ペースを尊重する」「失敗を成長に変える」「褒める」「チーム全体で支える」という5つの要素に集約されます。それは、新人が安心して学び、自信を持って成長できる環境を作ることに繋がります。そしてそのプロセスは、チーム全体の成長と、より良いケアの提供へと繋がる大切な種となります。


 |  一覧に戻る | 

お問い合わせはこちら

介護経営のコンサルタント顧問契約。
経営者・理事長の経営参謀として、業務効率化から
利用者・入居者獲得まで、
様々な経営のアドバイスを行います。

営業時間:平日火曜日・水曜日・木曜日10時から16時


メールでのお問い合わせ