89.調和の中で輝く「自分らしさ」
2025.07.01 |投稿者:神内秀之介
介護の職場では、利用者さんや同僚、他職種のスタッフと多くの関わりを持ちながら働きます。その中で、「自分らしさ」をどう表現するかは、仕事の充実感や信頼関係を築く上で非常に大切な要素です。しかし、ただ自分を押し出すだけではなく、チームや利用者さんとの調和を大切にしながら自己表現をすることが、介護職としてのプロフェッショナリズムを育てる鍵となります。今回は、哲学的な視点を交えながら、介護職でのベストな自己表現の仕方について考えてみましょう。
- 自分の「役割」を理解する
哲学者アリストテレスは、「すべての存在にはその役割がある」と語りました。介護の現場で自己表現をする際には、まず自分の役割を理解することが大前提です。
たとえば、「利用者さんに安心感を与えること」「チームの中で情報を正確に共有すること」といった、自分が果たすべき役割を明確にすることで、どのように振る舞い、何を伝えるべきかが見えてきます。役割を土台にした自己表現は、自分を輝かせるだけでなく、周囲との調和を生む力があります。
- 「言葉」に温かさを込める
哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「言葉は心の鏡である」と述べました。介護職としての自己表現で最も大切なのは、利用者さんや同僚との会話の中に、自分の思いやりや誠実さを込めることです。
たとえば、利用者さんに声をかける時には、「ただ状況を伝える」のではなく、声のトーンや表情、言葉の選び方に気を配ることで、相手が安心し、心を開きやすくなります。また、チーム内でのコミュニケーションでも、「お疲れ様です」「助かりました」といった感謝の言葉を積極的に使うことで、自分の存在が職場にとってプラスの影響を与えていることが伝わります。言葉に温かさを込めることは、自己表現の最もシンプルで効果的な方法です。
- 自分の強みを活かす
哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「自分の個性を知り、それを活かせ」と説きました。介護職での自己表現は、ただ周囲に合わせるだけではなく、自分自身の得意なことや思いを活かす場面を見つけることで、より自然で充実したものになります。
たとえば、話しやすい性格であれば、利用者さんや同僚とのコミュニケーションの架け橋になる役割を担う。観察力に優れていれば、利用者さんの些細な変化に早く気づいて対応する。このように、自分の強みを活かしながら働くことで、周囲にも「この人らしい」と思われる自己表現が自然と生まれます。自分らしさを活かすことが、職場における存在感を高める秘訣です。
- チーム内での「調和」を意識する
哲学者マルティン・ブーバーは、「人は他者との関係性の中で存在する」と語りました。介護現場での自己表現は、自分自身を主張するだけではなく、チーム全体の調和を重んじることが大切です。
たとえば、自分の意見を伝える際には、「どうすればチーム全体にとって良い結果になるか」を考える姿勢が求められます。また、他のスタッフの意見や方法にも耳を傾けながら、自分の考えを柔軟に調整することが、信頼関係を深めるためのポイントです。自己表現は、チームとの調和の中でこそ最大限に活きるのです。
- 小さな行動で自分を示す
哲学者アルベール・カミュは、「行動こそが存在を証明する」と述べました。介護の現場での自己表現は、言葉や態度だけでなく、小さな行動を通じて自分を示すことでも行えます。
たとえば、利用者さんのために車椅子を丁寧に整える、忙しい時に率先して物品を補充する、同僚が困っている時に気軽に手を貸す。こうした日々の小さな行動を積み重ねることで、「この人は頼りになる」「思いやりがある」という印象が周囲に伝わります。自己表現は、大きな言葉ではなく、小さな行動の中に宿るのです。
まとめ
介護職でのベストな自己表現は、「自分の役割を理解する」「言葉に温かさを込める」「自分の強みを活かす」「チームとの調和を意識する」「小さな行動で自分を示す」という5つのポイントを意識することで実現されます。それは、自分自身を輝かせるだけでなく、利用者さんやチーム全体に良い影響を与え、職場の調和を育む力を持っています。