72.安全はすべての基本


2025.06.14 |投稿者:神内秀之介

介護の現場は、利用者さんの安心・安全を守る「最前線」であり、私たちにとっても心を込めてケアを提供する「職場」です。この場を安全に保つことは、利用者さんの生活を支える基礎であり、私たち自身の健康やチームワークを守る基本でもあります。しかし、安全管理とは単なるルールの遵守ではなく、哲学的な思考を伴う「日々の姿勢」でもあります。ここでは、介護現場で活かすべき基本的な安全管理の知識を、哲学的視点から考えてみましょう。

  1. 「予防」という思考――未然に防ぐ意識を持つ
    哲学者アリストテレスが説く「徳(アレテー)」とは、良い結果を生むための習慣的な行いのことです。介護の現場では、この「徳」に当たるのが「予防」の意識です。転倒や誤飲といった事故を防ぐための安全管理は、問題が起きる前にリスクを察知し、予め対策を講じることにあります。

例えば、床に物が散らかっている場合、それを片付けることで転倒リスクが軽減されます。また、利用者さんが疲れた表情をしている時に早めに休憩を促すことで、体調悪化を防ぐことも可能です。「目の前の小さな兆候を見逃さない」ことが予防の本質であり、安全の第一歩です。

  1. 適切な「環境づくり」が安全を支える
    哲学者マルティン・ハイデッガーは、「人は環境との関係の中で存在する」と語りました。介護現場でも、利用者さんと環境の関係を整えることが、安全管理の基盤となります。

例えば、車椅子のブレーキがしっかりかかっているか、歩行器や杖が正しい位置に置かれているか、ベッド周りに危険なものがないか――こうした環境の整備は、利用者さんの安全と快適さを守るだけでなく、介護職自身の業務負担を軽減する効果もあります。「安全な環境を作る」ことは、利用者さんと私たちを繋ぐ支えのような役割を果たすのです。

  1. 「注意深い観察」という哲学的態度
    哲学者ソクラテスが実践した「無知の知」は、「自分はすべてを知っているわけではない」という謙虚な姿勢を指します。この態度を安全管理に活かすと、「常に注意深く観察し、気づきを得る」という行動に繋がります。

たとえば、利用者さんが普段と違う歩き方をしていたり、少しでも体調に異変がある様子を見せた場合、それを注意深く観察し、早期に対応することで、大きな事故や問題を未然に防ぐことができます。観察力を磨き、「見ているつもり」ではなく「本当に気づく」ことを目指しましょう。

  1. 「コミュニケーション」を安全管理の一部にする
    哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話こそが理解の基礎である」と述べました。安全管理もまた、利用者さんやチームメンバーとのコミュニケーションを通じて成り立つものです。

例えば、利用者さんに「痛いところはありませんか?」「今日は歩行器を使いたいですか?」と声をかけることで、体調や気分を把握しやすくなります。また、同僚との情報共有や相談を通じて、安全対策をチーム全体で強化することができます。「対話を通じて安全を作る」姿勢は、事故防止と信頼関係の構築に役立つのです。

  1. 自分自身の「安全」にも目を向ける
    哲学者ラルフ・ウォルド・エマーソンは、「健康とは、心と体の調和である」と述べました。介護の現場では、利用者さんの安全を守ることに集中するあまり、つい自分自身の健康や安全が後回しになりがちです。

しかし、利用者さんを守るためには、まず私たち自身の安全が確保されていなければなりません。重い物を持つ際には正しい姿勢で力を分散させる、業務中にこまめに水分補給をする、適切に休憩を取る――これらの基本を守ることが、自分自身を守り、安全なケアを続けるための鍵となります。

まとめ
介護現場での安全管理は、利用者さんと私たち自身の健康と安心を守る土台であり、予防、環境整備、観察、コミュニケーションの積み重ねから成り立ちます。哲学的な視点で言えば、それは「小さな行動を積み重ね、大きな安全を築く」プロセスそのものです。


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