71.哲学的に考える「つながり」の力
2025.06.13 |投稿者:神内秀之介
介護の現場では、利用者さんだけでなく同僚、先輩、他職種のスタッフとのつながりも重要な要素です。職場の人間関係がスムーズであれば、チームワークが向上し、より良いケアにつながります。しかし、価値観や立場の違う人々が集まる場では、時に摩擦やすれ違いが生じることもあるでしょう。そんな中で、信頼と調和を育むにはどうすれば良いのでしょうか?哲学的な視点を交えながら、人間関係の築き方を考えてみましょう。
- 「関係は出会いから始まる」――初対面の態度を大切にする
哲学者マルティン・ブーバーは、「すべての本当の人生は出会いである」と語りました。職場での人間関係も、最初の挨拶や会話といった「出会いの瞬間」から始まります。その第一歩でどのような態度を取るかが、その後の関係性に大きな影響を与えます。
例えば、初対面での明るい挨拶や笑顔、相手の話をじっくり聴く姿勢は、相手に好印象を与える鍵となります。この基本的な行動が信頼の土台を作り、コミュニケーションの扉を開くのです。「出会いの瞬間こそ、関係性のスタート地点」と意識して行動しましょう。
- 「違いを受け入れる心を持つ」――多様性から学ぶ姿勢
哲学者エマニュエル・レヴィナスは、「他者の存在は、私たち自身を広げるものだ」と述べました。職場には、年齢や経験、価値観が異なるさまざまな人々が集まります。時に自分と異なる考え方に戸惑うこともあるかもしれませんが、その「違い」こそがチームを豊かにする力を持っています。
たとえば「あの人のやり方は自分と違う」と感じた時、それを否定するのではなく、「どうしてその方法を選ぶのだろう?」と相手の背景に目を向けてみてください。「違いを学びの機会」と捉える柔軟な姿勢が、相互理解を深め、人間関係に柔らかさをもたらします。
- 「対話」の力を信じる――話すだけでなく聴く
哲学者ハンス・ゲオルク・ガダマーは、「対話は理解の架け橋だ」と語りました。職場での人間関係を築くには、ただ自分の意見を主張するだけでなく、相手の声をしっかりと聴くことが大切です。
例えば、「こうして欲しい」と思うことがある時でも、まずは相手の意見や気持ちに耳を傾け、「なぜそう考えるのか」を理解しようとする姿勢を持ちましょう。相手に「自分の話を聞いてもらえた」という安心感を与えることで、信頼が深まり、建設的なコミュニケーションが生まれます。聴くことは、相手との絆を育む最も基本的で強力な手段なのです。
- 「感謝の言葉は信頼を育む」――小さな場面で感謝を伝える
哲学者ラ・ロシュフコーは、「感謝は人々の心を繋ぎ止める強い糸だ」と言いました。職場での人間関係では、「ありがとう」と伝えることが大きな意味を持ちます。
たとえ些細なサポートであっても、「手伝ってくれて助かりました」「お疲れ様でした」といった感謝の言葉を積極的に伝えましょう。その一言が、相手との距離を縮め、ポジティブな雰囲気を作り出します。感謝の言葉を惜しまない姿勢が、職場全体を温かくする力を秘めています。
- 時には「自分から関係を修復する」勇気を持つ
哲学者ニーチェは、「失われた信頼を取り戻すには行動が必要だ」と述べました。職場で意見が衝突したり、関係がギクシャクしてしまうこともあるかもしれません。しかし、避けているだけでは状況は変わりません。
例えば、「先日の件では行き違いがあったかもしれません、ごめんなさい」と自分から歩み寄ることで、相手の心も解けることがあります。関係を修復する第一歩を自分から踏み出す勇気が、新しい信頼を生むのです。
まとめ
職場での人間関係を築くことは、信頼、対話、感謝、そして柔軟さを持つことが鍵となります。一人ひとりの違いを受け入れ、相手の声に耳を傾ける姿勢が、チーム全体の調和を生み出します。そして、感謝と思いやりのある態度を日々の中で積み重ねることで、良好な人間関係を育てることができるでしょう。
