63.心と体を解きほぐす哲学的アプローチ
2025.06.05 |投稿者:神内秀之介
介護の現場で働く皆さんにとって、ストレスは切り離せない存在かもしれません。利用者さんに全力で向き合い、チームで協力し合う中で、知らず知らずのうちに心も体も疲弊してしまうことがあります。しかし、私たち人間には、ストレスを解消し、自分自身をリセットする知恵が備わっているのです。ここでは、哲学の視点を取り入れつつ、ストレスを軽減するためのリラクゼーション方法をご紹介します。
- 「今、ここ」に意識を向けるマインドフルネス
哲学者エックハルト・トールは、「今、この瞬間に生きること」が幸福の鍵だと説きました。ストレスの多くは、過去に囚われたり、未来への不安から生まれます。そんな時こそ、「今、ここ」に意識を集中させるマインドフルネスを取り入れてみてください。
簡単な方法としては、深呼吸に意識を向けること。「吸うときに体が広がり、吐くときに緩む感覚」に集中してみましょう。過去や未来から解放され、「今、この瞬間」を感じることで、心が軽くなり、ストレスが和らぎます。これは、どんなに忙しい介護の現場でも1分間で実践できるリラクゼーションです。
- ストア派哲学に学ぶ――コントロールできないものを手放す
古代ギリシャの哲学者エピクテトスは、「私たちがコントロールできるものは、内面の選択だけである」と語りました。介護の現場では、利用者さんの感情や突然の出来事、周囲の状況など、自分ではどうにもならないことが多々あります。これらに直面すると、強いストレスを感じることもあるでしょう。
しかし、エピクテトスの教えに従って「コントロールできないものを受け入れ、自分の反応を選ぶ」ことに意識を向けてみてください。できることに集中し、できないことに囚われない姿勢が、心の負担を軽くし、ストレスを和らげる秘訣です。
- 音楽で整える心のバランス
哲学者フリードリヒ・ニーチェは、「音楽がなければ人生は間違いだ」と表現するほど、音楽の力を信じていました。音楽は、ストレスを軽減し、感情を整える力を持っています。忙しい日々の中でも、自分の好きな音楽を聴く時間を少しでも作ってみましょう。
リラックスしたいときには、穏やかなクラシック音楽や自然の音を取り入れるのもおすすめです。例えば、波の音や鳥のさえずりを背景にした音楽を聴くだけで、心がほぐれ、自然とのつながりを感じることができます。音楽は、ストレスの中で失われがちな「心の調和」を取り戻す手助けをしてくれるのです。
- 動きの中でストレスを手放す――自然と歩く哲学
フランスの哲学者モンテーニュは、「歩くことで心が整理される」と述べています。ストレスを感じた時、自然の中をゆっくりと歩いてみることをおすすめします。ただ歩くだけでなく、「風の音」「木々の香り」「足元の土の感触」といった自然の要素に意識を向けることで、心が整い、ストレスが解放されていくのを感じるでしょう。
また、歩くことで身体が活性化され、脳内のセロトニン(幸福ホルモン)の分泌が促進されます。特に介護の仕事では、日々の疲れを癒やし、心身をリフレッシュする時間として、自然の中を歩くことが有効です。
- 自分を許す「優しさ」の哲学
哲学者カール・ロジャースは、「自己受容」こそが人間の成長の鍵と考えました。ストレスを感じる時、多くの場合、自分に厳しすぎることが原因になっているかもしれません。「もっと頑張らなければ」と自分を追い込むより、「今この状態でも十分にやっている」と自分を許し、認めてあげることが大切です。
日々の中で、「自分をいたわる時間」を意識的に作りましょう。好きな香りのアロマを焚いたり、温かいお茶をゆっくり味わうなど、小さなリラクゼーションを取り入れることで、自分自身に優しさを向ける練習をしてみてください。
まとめ
介護の現場で働く皆さんにとって、ストレスは避けられないものかもしれません。しかし、哲学の知恵を取り入れ、自分なりのリラクゼーション方法を見つけることで、心と体を上手に整えることができます。「深呼吸」「自然を歩く」「音楽を楽しむ」「自己受容」――これらの小さな工夫を日々の生活に取り入れてみてください。
