60.ケアの本質を問い続ける


2025.06.01 |投稿者:神内秀之介

介護の現場で、利用者さんに対して行う一つひとつの対応。それは単なる「業務」ではなく、「人としての尊厳をどう守るか」という大切な課題を含んでいます。身体的なケアだけでなく心のケアが求められる場面で、「尊厳を守る」とはどういうことなのでしょうか?ここでは、その対応について考えてみましょう。

  1. 一人の「人」として見る
    利用者さんを「要介護者」「利用者」という枠で見るのではなく、「一人の人間」として向き合うことが、尊厳を守る上での第一歩です。それぞれがその人らしい人生を歩んできた背景があることを忘れず、たとえば「○○さん」「△△様」と名前で呼びかけたり、相手の価値観や好みをリスペクトしながらケアを行うことが大切です。その人のストーリーを尊重する視点を持つことが、利用者さんに「自分を大切にされている」と感じてもらう鍵となります。
  2. 小さな選択肢を提供する
    介護の現場では、利用者さんが自分で選択できる場面が少なくなることがあります。しかし、たとえ小さなことでも「自分で選ぶ機会」を提供することが、尊厳を守る対応に繋がります。例えば、「今日の服はどちらが良いですか?」「お茶と水、どちらにしますか?」といった具合に、選択肢を提示することで、利用者さん自身が意思決定を行える場面を作りましょう。「自分で選ぶ」という意識を取り戻してもらうことが、尊厳の回復に繋がります。
  3. プライバシーを守る配慮を忘れない
    尊厳を守るケアには、プライバシーへの配慮が欠かせません。例えば、着替えや入浴介助の際は、必ずカーテンや扉を閉める、体を露出させる部分を必要最小限に抑えるなど、利用者さんが羞恥心を感じないように工夫することが必要です。また、他の利用者さんやスタッフの前で個人情報を話すことは避け、相手の「見られたくない」「知られたくない」気持ちを尊重することが重要です。
  4. コミュニケーションを大切にする
    利用者さんの尊厳を守るためには、相手の声に耳を傾けることが何よりも大切です。ただ物理的なケアを行うだけでなく、「今日はどんな気分ですか?」「何か気になることはありませんか?」といった声かけを忘れないようにしましょう。利用者さんが言葉にしづらい想いもあるかもしれないため、表情や仕草を観察しながら、相手の感情や意図を理解しようと努めることが大切です。「対話」を通じて信頼関係を築くことが、尊厳を守るケアに繋がります。
  5. 自立を支えるケアを意識する
    利用者さんに対する尊厳を守る対応とは、過剰な手助けではありません。「できることはご自身で行ってもらう」「少しのサポートで自力でできるように促す」といった自立を支えるケアが重要です。たとえ時間がかかっても、「自分でできた」という達成感が、利用者さんの心に生きる力を与えます。支援をしすぎない勇気を持つことが、相手の尊厳を守る姿勢だと言えるでしょう。

まとめ
「尊厳を守る」とは、その人が人間としての価値を感じられるような配慮や対応を行うことです。一人の人として向き合い、選択肢を提供し、プライバシーを守り、対話を通じて信頼を築く――これらを心がけることで、利用者さんの人生をより豊かなものにすることができます。


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