52.信頼とケアを支える「言葉」の力


2025.05.24 |投稿者:神内秀之介

介護記録は、利用者さんの状態やケアの内容を正確に伝えるための重要なツールです。それは単なる業務の一部ではなく、利用者さんにとって、そしてチーム全体にとって、信頼を築くための「言葉の橋渡し」とも言えます。ここでは、介護記録を適切に書くためのポイントと注意点を、わかりやすくお伝えします。

  1. 事実を正確に記録することが基本
    介護記録において何より大切なのは、主観や推測ではなく、事実をありのままに記録することです。例えば、「元気だった」ではなく、「○○時頃に利用者さんが笑顔で『こんにちは』と挨拶をされた」と具体的に表現しましょう。事実を具体的に記録することで、誰が読んでも状況を正確に把握できる記録になります。
  2. 時系列を意識し、流れを明確に
    介護記録は、利用者さんの日々のケアや状態の変化を共有するための重要な情報源です。時間や順序が曖昧だと、記録をもとに適切なケアを計画することが難しくなります。記録を書く際は、「いつ」「何が起き、どう対応したか」を時間の流れに沿って記録することを意識しましょう。例えば、「14時:利用者さんが紅茶を半分ほど飲まれた後、椅子から立ち上がろうとされたが少しふらつきが見られた」といったように、状況の前後関係を把握できる記録を心がけます。
  3. 読む人を意識するシンプルな表現
    記録は、自分だけでなく、他のスタッフや関係職種の人が共有するものです。そのため、専門的な表現や難しい言い回しを避け、誰が読んでも分かりやすい文章を心がけましょう。特に、「簡潔」「正確」「明瞭」を意識した書き方が重要です。また、略語や独自の表現を使う場合は、職場内で統一されたものを使用するようにしましょう。
  4. 感情的な表現を避ける
    利用者さんの行動や態度を記録する際、感情的な表現や評価を避けることも大切です。「困った様子」「怒っているようだった」といった主観的な表現ではなく、「○○時に利用者さんが声を荒げ、食器を下げることを拒否された」といった具体的な行動を記録します。客観的な記録を書くことで、利用者さんへの公平な対応に繋がります。
  5. プライバシーを守る配慮を忘れない
    介護記録は、利用者さんのプライバシーを守るための高い倫理観と注意が求められます。記録に必要のない家庭事情や個人的な情報を書き込むことは避け、あくまでケアに関わる内容に限定しましょう。また、記録の取り扱いにも注意を払い、不必要な人が閲覧できないように管理することも重要です。
  6. 小さな変化を見逃さない
    介護記録は、利用者さんの健康状態や心の変化を見極めるための重要なツールです。「少し元気がない」「食事量が減った」といった小さな変化も記録に残すことで、早期に体調の異変を察知できる場合があります。「些細なことでも記録する」という意識を持つことが、利用者さんに対する質の高いケアに繋がります。

まとめ
介護記録は、利用者さんのケアを支える「見えない土台」のような存在です。正確さ、簡潔さ、客観性を意識して記録を書くことで、チーム全体の信頼とケアの質が向上します。記録を書くことは単なる作業ではなく、利用者さんの生活をより良いものにするための大切な一歩――そう考えて取り組んでみてください。


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