51.理性と価値観を活かしたチームづくり


2025.05.23 |投稿者:神内秀之介

介護の現場では、失敗を防ぎ、利用者さんに最適なケアを提供するために、わからないことがあればすぐに先輩に質問することが重要です。しかし、新人や若手スタッフの中には、「こんな質問をしたら迷惑かな」「自分で解決すべきでは?」と躊躇してしまう人も少なくありません。そこで、ドイツの哲学者マックス・ホルクハイマーが提唱した「道具的理性」や「批判的理性」の考え方をヒントに、質問しやすい職場環境を作る方法を考えてみましょう。

「道具的理性」で効率的な質問の仕組みを作る
ホルクハイマーの「道具的理性」とは、目的を達成するために最適な手段を選び出す理性のことです。介護現場での「質問」も、問題を解決し、利用者さんに最適なケアを提供するという明確な目的のために行われます。そのため、質問しやすい環境を作るには、効率的で具体的な仕組みがあると良いでしょう。例えば、「質問を受け付ける時間を決める」「メモやチャットツールを活用して質問を整理する」など、質問しやすさを支える道具的な工夫を取り入れることで、気軽に相談しやすい環境が生まれます。

「批判的理性」で価値観を共有する
一方で、道具的理性だけでは、質問しやすい職場環境を十分に作ることはできません。ここで重要となるのがホルクハイマーのいう「批判的理性」です。これは、人間性や価値観を重視し、ただ効率を追求するだけでなく、チームの文化や信頼を深めるための理性です。介護職場では、質問を「失敗」や「弱さ」と捉えるのではなく、「より良いケアのための成長の機会」として捉える価値観を共有することが大切です。「どんな質問でも歓迎する」というメッセージを日常的に伝え、安心して質問できる心理的安全性を作りましょう。

「批判理論」で職場文化を見直す
ホルクハイマーの「批判理論」は、社会や文化を批判的に分析し、変革を促すための理論です。この視点を職場に応用すると、「なぜ質問がしにくい環境になっているのか?」を冷静に分析し、その根本的な原因を改善するアプローチが求められます。例えば、「忙しさの中で質問を避ける風潮がある」「上下関係が強く、質問がしづらい雰囲気がある」など、現場の課題を洗い出し、少しずつ変革を進めることが大切です。こうした批判的な視点を持つことで、表面的な対応ではなく、持続可能な信頼関係を築く職場文化が生まれます。

「啓蒙思想の批判」から得る教訓
ホルクハイマーは、啓蒙思想が過度に合理主義を崇拝することを批判しました。これを介護現場に置き換えると、「理にかなっているから質問しやすい」というだけでは不十分であり、感情や人間性にも目を向ける必要があります。つまり、質問しやすい環境を作るためには、「大丈夫、何でも聞いてね」と先輩が温かく声をかけるような、人間的な接触が欠かせません。合理性だけでなく、共感や思いやりが、質問しやすさを支える重要な要素となります。

まとめ
ホルクハイマーの哲学が教えるのは、「効率」と「人間性」の両方を重視することが、良い環境を作る鍵であるということです。介護現場で質問しやすい職場を作るには、質問の仕組みを整える道具的理性と、信頼や価値観を育てる批判的理性のバランスが必要です。そして、現場の課題を冷静に見直し、変革を進める批判的な視点を持つことで、より良い職場文化を築いていくことができます。


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