49.利用者さんとのコミュニケーションのコツ
2025.05.21 |投稿者:神内秀之介
介護の現場で、利用者さんとのコミュニケーションは、信頼関係を築き、質の高いケアを提供するための基盤です。しかし、時には「どうして伝わらないのだろう」「なぜこんな対応になってしまったのか」と悩むこともあるでしょう。そんな時、フランシス・ベーコンの哲学から、利用者さんとのコミュニケーションをより良くするためのヒントを得ることができます。
「帰納法」で一人ひとりを理解する
ベーコンが提唱した「帰納法」とは、具体的な事例を積み重ねて一般的な法則を導き出す方法です。これを介護の現場に置き換えると、「利用者さん一人ひとりの具体的な行動や言葉を観察し、その人固有のニーズや価値観を理解する」ことが大切です。例えば、ある利用者さんが特定の時間に不安を示すなら、その背景に何があるのかを考え、一貫した行動パターンを見つけることができます。「この人はこういう時に安心するんだ」と気づくことで、より的確な対応が可能になるのです。
「イドラ」を手放す
ベーコンは、「イドラ(先入観や偏見)」が人間の正しい判断を妨げると指摘しました。介護の現場でも、この「イドラ」がコミュニケーションの妨げになることがあります。ここでは、4つのイドラに基づいて、どのように先入観を手放すかを考えてみましょう。
種族のイドラ(人間全体の先入観)
「高齢者は頑固だから話が通じない」といった一般化された先入観を持たないことが重要です。誰もがそれぞれ異なる個性を持っていることを理解し、一人ひとりとフラットな視点で向き合いましょう。
洞窟のイドラ(個人の先入観)
自分の過去の経験や価値観に基づいて、「こういう利用者さんはこうだろう」と決めつけてしまうのは避けましょう。自分自身の偏見に気づくことが、利用者さんを本当に理解するための第一歩です。
市場のイドラ(言葉や概念の誤り)
言葉の使い方や理解の違いからコミュニケーションが行き違うこともあります。利用者さんが使う言葉の背景や意味を丁寧に読み取り、時にはこちらの表現を相手に合わせて調整することが大切です。
劇場のイドラ(権威への盲信)
過去のやり方や指導された通りの方法に固執するのではなく、実際の利用者さんの反応に基づいて柔軟に対応することを心がけましょう。
「知は力なり」――知識をコミュニケーションに活かす
ベーコンの「知は力なり」という言葉は、介護現場にも当てはまります。利用者さんの背景や状態、価値観についての知識を深めることで、より適切で効果的なコミュニケーションが可能になります。たとえば、認知症の利用者さんにはどのような言葉が響きやすいのか、文化的背景や趣味に基づいてどんな話題を提供すれば良いのか――これらを知っていることで、利用者さんとの距離はぐっと縮まります。
まとめ
フランシス・ベーコンの哲学が教えるのは、「先入観を手放し、具体的な事例から相手を理解し、知識を活かす」ことの重要性です。利用者さんとのコミュニケーションでも、固定観念に縛られるのではなく、一人ひとりに合わせた対応をすることで、信頼関係を深めることができます。
