47.行き詰まりを超える支援方針
2025.05.19 |投稿者:神内秀之介
介護の現場では、利用者さんに最適な支援を提供するために、さまざまな方法を試しながら試行錯誤を重ねることがあります。しかし、時に複雑な方針や多角的なアプローチが絡み合い、「本当にこれで良いのだろうか」と支援が行き詰まる瞬間もあるかもしれません。そんな時こそ、哲学者ウィリアム・オッカムの「オッカムの剃刀」や「唯名論」の視点を取り入れてみると、解決の糸口が見えてくるかもしれません。
「唯名論」で個々の利用者さんを見つめ直す
オッカムの「唯名論」とは、「普遍的な概念はただの名前にすぎず、現実に存在するのは個々の具体的なものだけ」という考え方です。介護現場では、「高齢者」「要介護者」といった広い枠組みで利用者さんを捉えるのではなく、一人ひとりの具体的な状況やニーズを丁寧に見つめ直すことが重要です。支援方針が行き詰まった時こそ、抽象的な概念や型にはめるのではなく、「この人が本当に必要としているのは何か?」と具体的に考えることで、シンプルかつ効果的な方法が見えてくることがあります。
「オッカムの剃刀」でシンプルに解決する
オッカムの有名な考え方である「オッカムの剃刀」は、「何かを説明する際に、必要以上に複雑にしない」という原則を示しています。介護の支援方針でも、「これも必要かもしれない」「あれも考慮するべきだ」と複雑な要素を次々に加えてしまうと、かえって方向性を見失うことがあります。そんな時は、「本当に必要なものは何か?」を見極め、不要な要素をそぎ落とす勇気を持ちましょう。一歩引いてシンプルに考えることで、意外なほどスムーズに解決策が見つかることがあります。
複雑さではなく「本質」に目を向ける
支援方針が行き詰まる時、その原因の多くは「複雑化」にあります。「この方法がうまくいかないなら、もっと手を加えなければ」という発想ではなく、「そもそも、私たちの目指すべき本質とは何か?」を見つめ直すことが重要です。オッカムの哲学に基づけば、複雑な議論よりも、利用者さんの生活をより良くするための根本的な目的にフォーカスすることで、行き詰まりが解消されやすくなります。
まとめ
ウィリアム・オッカムの哲学が教えてくれるのは、「本当に必要なものを見極め、シンプルに考えることの力」です。支援方針が行き詰まった時こそ、抽象的な概念や複雑な要素を捨て、個々の利用者さんの具体的なニーズに目を向けること。そして「オッカムの剃刀」を使って、不要なものをそぎ落とし、本質を追求することが大切です。
介護は、シンプルさの中にこそ本当の力が宿る仕事です。「もっとシンプルにできないか?」と問いかけながら、支援方針を見直してみてください。そのプロセスが、利用者さんにとっても、あなた自身にとっても、より良い結果を生む第一歩となるはずです。