46.介護現場でのアンガーマネジメント


2025.05.18 |投稿者:神内秀之介

介護の現場では、利用者さんやそのご家族、さらには同僚とのやり取りの中で、つい感情が高ぶりそうになる瞬間もあるかもしれません。ストレスの多い環境では、「怒り」という感情をうまくコントロールすることが、自分自身にも職場全体にも大きな意味を持ちます。ここでフランスの哲学者ミシェル・フーコーの「知と権力」「規律化」「正常と異常」といった概念を通して、アンガーマネジメントを考えてみましょう。

「知と権力」――怒りの背景を知る
フーコーは、「知」と「権力」が密接に関わり合い、社会の仕組みを形成していると述べました。同じように、私たちの「怒り」も、ただの感情ではなく、その背後には「知(背景や原因)」が隠れています。たとえば、利用者さんからの厳しい言葉に怒りを覚えたとき、その背景に「体調の不調」や「不安」があることに気づけば、その感情を別の形に昇華できるかもしれません。怒りの背後にある要因を「知る」ことが、アンガーマネジメントの第一歩なのです。

「監獄」と「規律化」――感情を押し込めない
フーコーは、社会が人々を「監獄化」し、規律によって制御する構造を指摘しました。この考えは、感情にも当てはまります。介護の現場では、「感情を抑え込むことがプロフェッショナルだ」と考えがちですが、それでは心が疲弊してしまいます。怒りを押し込めて「規律化」するのではなく、適切に発散したり、建設的な形で表現する方法を見つけることが大切です。たとえば、信頼できる同僚に話を聞いてもらったり、深呼吸やリラクゼーションを取り入れることで、感情をコントロールしやすくなるでしょう。

「正常」と「異常」――怒りを悪と決めつけない
フーコーは、「正常」と「異常」の境界が社会によって恣意的に決められていると論じました。同じように、「怒り」を完全な悪として排除しようとするのではなく、それも自然な感情の一部であると受け入れることが重要です。怒りそのものを否定するのではなく、「なぜ怒りを感じたのか」「その感情をどう活かせるか」を考えれば、怒りは行動を改善する力に変わります。たとえば、「この状況を変えたい」という怒りが、現場のより良いケアや働き方の改善に繋がるきっかけとなることもあるのです。

まとめ
ミシェル・フーコーの哲学が示すのは、怒りという感情を一方的に抑え込むのではなく、その背景を理解し、適切に扱うことで新たな価値を生み出せるということです。怒りの「知」と「力」を活かし、感情を建設的な行動へと繋げる視点を持つことが、介護現場でのアンガーマネジメントの鍵となります。


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