19.ナラティブアプローチによる利用者支援
2025.05.17 |投稿者:神内秀之介
「ナラティブアプローチ」って何?
こんにちは、新人介護支援専門員の皆さん!
ケアマネージャーとして利用者さんに寄り添う日々、「もっと利用者さんの気持ちに沿った支援ができたらいいのに…」と思うことはありませんか?そんな時に活用できるのが、ナラティブアプローチです。
ナラティブアプローチとは、「物語(ナラティブ)」に注目し、利用者さんが語る人生や経験を共に紡ぎ直していく支援方法のこと」。利用者さんの語りに耳を傾け、それを元に新しい未来を描いていく手法です。
今回は、このナラティブアプローチの基本から、ケアマネジメントでの実践方法までをご紹介します!
1. ナラティブアプローチの基本的な考え方
ナラティブアプローチの基本は、「人の経験や感情は物語として語られる」という考え方に基づいています。
利用者さんが「自分の人生をどう語るか」は、その人の物語の一部であり、その物語が「ポジティブなもの」か「ネガティブなもの」かで、その人の気持ちや行動が大きく変わります。
例えば:
- ネガティブな物語:「もう年をとったから何もできない」「家族に迷惑ばかりかけている」
- ポジティブな物語:「まだできることがある」「これまで家族を支えてきた自分が誇らしい」
ナラティブアプローチでは、この「物語」を一緒に紡ぎ直し、ポジティブな視点を広げていくことを目指します。
2. なぜナラティブアプローチが有効なのか?
① 利用者さんの尊厳を守る
ナラティブアプローチは、利用者さんが自分自身の物語を語る場を提供することで、「自分らしさ」や「尊厳」を取り戻すサポートをします。
② 利用者さんの「新しい気づき」を生む
物語の中にある希望や成功体験に気づくことで、「まだ自分にもできることがある!」と新しい視点が生まれます。
③ 利用者さんとの信頼関係が深まる
ただ話を聴くのではなく、一緒に物語を紡ぐことで、利用者さんとの信頼関係がより強固になります。
3. ナラティブアプローチを活用した支援の進め方
① 利用者さんの「語り」を引き出す
ナラティブアプローチのスタートは、利用者さんに「物語を語ってもらうこと」です。例えば:
- 「これまでどんなことを大切にして生きてこられましたか?」
- 「若い頃やっていて楽しかったことは何ですか?」
- 「今どんな暮らしをしたいと考えていますか?」
利用者さんが「自分の人生」を話しやすくするよう、安心できる雰囲気を作りましょう。
② ポジティブな物語を一緒に発見する
利用者さんが語る話の中には、必ず「ポジティブなエピソード」や「強み」が隠れています。それを引き出し、広げていくことが重要です。
例えば:
- 利用者さん:「最近は全然動けなくて…昔は元気だったんですけどね。」
- ケアマネ:「昔元気だった頃、どんなことをしていましたか?」
- 利用者さん:「趣味で庭いじりをしていました。それが楽しかったんです。」
- ケアマネ:「素晴らしいですね!今も少しだけ植物を育ててみたらどうですか?」
このように、過去のポジティブな物語を活かして、新しい行動につなげることができます。
③ 一緒に新しい物語を紡ぐ
過去の物語をヒントにしながら、利用者さんと一緒に新しい物語を描いていきます。
例えば:
- 「庭いじりが好きだったなら、家の中で始められる簡単なガーデニングをしてみましょう!」
- 「家族と過ごす時間が大切なら、週末にみんなでできるイベントを計画してみませんか?」
利用者さんが「これから先の人生」をポジティブに語れるようなサポートがカギです。
4. 実例:ナラティブアプローチが利用者さんに笑顔を取り戻したケース
事例:70代女性Aさんの場合
- 背景:Aさんは長年趣味だった裁縫を「もう手が不器用だから」と諦めていました。話す内容も、「もう何もする気になれない」というネガティブなものが多く、外出もほとんどしない状態でした。
- ナラティブアプローチの実践:
- Aさんに「これまで得意だったこと」について話を聴くと、裁縫が大好きだったことが分かりました。
- Aさんに「過去の作品を見せてもらえませんか?」とお願いし、昔の作品を一緒に振り返りました。
- 簡単な縫い物から再開することを提案し、裁縫キットを準備。徐々に気持ちが前向きになり、デイサービスでのクラフト活動にも参加するようになりました。
- 結果:Aさんは裁縫を通じて「自信」を取り戻し、笑顔が増えました。
5. ナラティブアプローチを実践する新人ケアマネへのエール
ナラティブアプローチは、特別なスキルがなくても「相手の物語を聴き、共感し、寄り添う」という基本的な姿勢から始められます。
新人の皆さんが意識したいのは:
- 利用者さんの話を否定せず、じっくり聴くこと。
- 小さなポジティブサインを見逃さないこと。
- 一緒に未来の物語を描き、支えること。
焦らずじっくりと取り組めば、きっと利用者さんの新しい希望を引き出すお手伝いができるはずです!
今日のまとめ:ナラティブアプローチによる支援ポイント
- 物語を聴く:「利用者さんはどんな人生を歩んできたのか」を丁寧に聴く。
- ポジティブなエピソードを引き出す:語りの中にある希望や成功体験を一緒に見つける。
- 新しい未来を一緒に描く:過去の物語を活かしながらポジティブな未来像を紡ぐ。
- 信頼関係を深める:「物語を共有する」というプロセス自体が、信頼を築く鍵になる。
最後にひとこと!
「ナラティブアプローチで、利用者さんの人生が新しい色で輝き出す。」
焦らず、一つひとつの物語を紡ぐ中で、ケアマネージャーとしての力が自然とついていきます。きっと利用者さんの笑顔や感謝の言葉が、あなたを元気にしてくれるはずです!
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