44.介護現場の採用戦略


2025.05.16 |投稿者:神内秀之介

介護業界の採用戦略は、利用者に質の高いケアを提供するための最も重要な課題の一つです。しかし、「経験者を優遇するべき」「若手のポテンシャルを重視するべき」など、採用における固定観念や慣習が、かえって狭い視野を生むこともあります。ここで、フランスの哲学者ジャック・デリダの「脱構築」の視点を採用戦略に応用してみると、新しい可能性が見えてくるかもしれません。

「脱構築」で固定観念を見直す
デリダの主張する「脱構築」とは、既存の枠組みや固定観念を一度分解し、その背景や矛盾を直す思考法です。介護の採用でも、「即戦力だけが重要」「資格がなければ優秀ではない」といった既存の価値観を疑い、新しい視点を取り入れることで、より多様な人材を出せる可能性があります。たとえば、これまで経験のある未経験者の中にも、共感力や熱意を備えた人材がいるかもしれません。固定観念を脱構築することで、採用戦略にフレキシビリティと可能性を加えることができます。

「パロール」と「エクリチュール」を重視する
デリダは「パロール(話し言葉)」と「エクリチュール(書き言葉)」の関係性を問い直しました。採用の現場でも、履歴書の「エクリチュール」だけでは見えにくい部分があり、面接や会話といった「パロール」を通じて、その人の人間性や熱意をより深く理解することができます。一方、書かれた情報も重要な手がかりです。これら双方をバランスよく重視することで、候補者の真の姿を見極める採用プロセスを築くことができるでしょう。

「差延」の視点を持つ採用
デリダの「差延」とは、物事が常に他の要素との関係の中で成り立ち、固定された意味がないという考え方です。採用においても、「理想的な人材像」を固定しすぎるのではなく、候補者がチームや現場でどのように成長し、貢献していくかという関係性を重視する視点が大切です。例えば、「現時のスキル」だけでなく、「この人が職場に入ることで、どのような新しい価値を生むか」「チーム全体にとってどのような意味を持つか」という未来の可能性を見据える採用が重要です。

「グラマトロジー」で多様性を読み取る
デリダの「グラマトロジー(文字論)」は、文字や記号の本質を問い直すもので、多様な解釈の可能性を示唆します。採用の場でも、候補者の経験や経歴を「一つの意味」に絞るので、多様な側面から理解することが求められます。例えば、「異業種での経験」や「一見関係なさそうな趣味」も、その人ならではの強みやアイデアの源泉になるかもしれません。多様性を尊重し、候補者の背景を柔軟に受け止める視点が、採用の成功に繋がります。

まとめ
デリダの哲学が教えてくれるのは、「既存の枠組みを壊して、新しい可能性を見つける」ことの重要性です。介護業界の採用戦略でも、固定観念を脱構築し、候補者の多様な魅力や可能性を発見することで、組織全体を活性化させる新しい人材を見出すことができます。


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