40.カスタマーハラスメントへの向き合い方


2025.05.12 |投稿者:神内秀之介

介護の現場では、利用者さんやご家族からの意見や要望に全力で応えようとする中で、時に過度の要求や厳しい態度、いわゆる「カスタマーハラスメント」に直面することがあります。こうした状況が続くと、心が疲弊し、介護の本質を見失いかねません。しかし、西田幾多郎の哲学から、私たちがこの難題にどう向き合うべきかを考えるヒントを得ることができます。

「純粋経験」で先入観を手放す
西田幾多郎が提唱する「純粋経験」とは、あらゆる先入観を排除し、物事をありのままに受け取ることです。利用者さんやご家族から厳しい言葉を受けた時、つい「理不尽だ」「不公平だ」と感情的に反応してしまうことがあります。しかし、その言葉の背景にある「不安」や「助けを求める声」に目を向けることができれば、相手の真意をより深く理解することができるかもしれません。純粋な目で状況を捉えることが、カスタマーハラスメントに巻き込まれず、冷静に対応する第一歩となるのです。

「絶対矛盾的自己同一」で矛盾を超える
西田は、「絶対矛盾的自己同一」という概念で、一見矛盾しているように見える要素が、実はより高次元で統一されると説きました。介護の現場では、「利用者さんの満足を第一にしたい」という思いと、「スタッフの健康や働きやすさも守りたい」という思いがぶつかることがあります。この二つは一見対立しているように見えますが、実際には、お互いを支え合う関係でもあります。利用者さんの不満や要求に真摯に向き合いつつも、スタッフが無理をせず健全な環境を維持することが、結果的により良いケアと信頼を築く道になるのです。

「場所」を意識する対応
西田の言う「場所」とは、すべての存在が自己を表現し、他者と関わり合う根源的な領域のことです。介護の現場もまた、利用者さん、家族、スタッフがそれぞれの思いを表現し、繋がり合う「場所」と言えるでしょう。カスタマーハラスメントに直面した時も、この「場所」を守るために、「意見を受け止めながらも建設的な対話に繋げる」姿勢が重要です。過度な要求には毅然とした対応をしつつも、相手との関係を修復し、共に良い方向へ進むための「場所」を維持する努力を続けましょう。

「知は愛であり、愛は知である」
西田は、「知は愛であり、愛は知である」と述べました。相手を知ろうとすることは、相手を愛する行為であり、愛があるからこそ深く知ろうとする気持ちが生まれます。厳しい態度の裏に隠れた相手の心情に寄り添い、理解しようと努めることが、カスタマーハラスメントを乗り越える鍵となります。また、自分自身や仲間を愛し、ケアする心を忘れないことも大切です。その愛が、現場を支えるエネルギーとなります。

まとめ
西田幾多郎の哲学は、カスタマーハラスメントという難題に対して、「物事を純粋に受け止め」「矛盾を統合し」「場所を守る」アプローチを示してくれます。そして、相手を知ろうとする愛と、自己を大切にする愛の両方を持つことで、私たちは介護の現場をさらに豊かで健やかな場所へと変えていけるでしょう。


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