32.介護現場でのメンタルヘルスケア


2025.05.04 |投稿者:神内秀之介

介護という仕事は、利用者さんの生活を支え、喜びを分かち合う尊いものです。しかし、その一方で、日々の重責やストレスから、自分自身の心が疲弊してしまい、「なんだか心が晴れない」「やる気が出ない」という状態に陥ることもあります。このような心の状態は、哲学者キルケゴールが指摘した「絶望」の一種かもしれません。そして、その絶望に自分が気づかないまま働き続けることは、心の危機をさらに深めてしまう可能性があります。

絶望は「死にいたる病」
キルケゴールは、絶望を「死にいたる病」と呼び、それが人間にとって最も恐るべき状態だとしています。これは、ただ落ち込んでいる状態を指すのではありません。むしろ、「自分の本当の心の声を無視し続ける」「自分を偽る」ことで心のバランスを崩し、次第に希望を失っていく状況を指しています。介護現場でも、忙しさの中で「自分の気持ちに蓋をする」ことが習慣化してしまうと、知らず知らずのうちに心が絶望に近づいてしまうことがあります。

気づかない絶望が最も危険
キルケゴールは、「最悪なのは、自分が絶望していることに気づかないこと」だと言います。介護現場でも、「どこか心が重いけど、これが普通だ」と感じてしまったり、「みんな同じように忙しいのだから、自分だけ弱音を吐けない」と思い込んでしまったりすることがあります。しかし、それは心のSOSを見逃しているサインかもしれません。自分が本当はどう感じているのか、どうしたいのかに気づくことが、絶望から抜け出す第一歩です。

文句を言う背後に隠れた心の声
キルケゴールは、「世の中が自分を理解してくれないと言い張り、文句をつけて生きている状態」も一種の絶望だと述べています。介護の現場で、「職場がもっとこうしてくれれば…」「周りが自分の努力をわかってくれない」といった不満を抱えることもあるかもしれません。しかし、その不満の背後には、「自分自身を認めてほしい」「もっと心地よい環境で働きたい」という真の欲求が隠れていることがよくあります。それを他人に向けるだけではなく、自分でその声に耳を傾け、対処していくことが必要です。

心のケアを大切にするために
介護の現場で絶望に陥らないためには、まず自分自身の心の健康を大切にすることが欠かせません。もし「心が疲れているな」と感じたら、周りに相談したり、少し休息を取ったりすることをためらわないでください。また、同僚や仲間の表情や声色に注意を払い、お互いに支え合える環境を作ることも大切です。キルケゴールの哲学が示すように、心の声に気づき、自分の感情と向き合うことが、絶望を乗り越える第一歩です。

まとめ
絶望は、人間にとって最も恐るべき心の状態です。しかし、それに気づき、自分の心と向き合うことで、そこから抜け出す道が開かれます。介護の現場で働くあなたが心の健康を守り、充実感を持って仕事を続けるために、自分自身と仲間の「心の声」に耳を傾けてください。それが、職場全体の健やかな環境づくりにも繋がります。


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