28.多様性を生かす介護現場
2025.04.30 |投稿者:神内秀之介
介護の現場は、利用者さん、家族、スタッフ、地域住民など、多様な人々が関わり合いながら成り立っています。それぞれが異なる価値観や背景を持つ中で、時に「自分の意見が通らない」「みんなが同じ方向に流れている気がする」と感じることもあるでしょう。そんな時こそ、ハンナ・アーレントの哲学が私たちに重要なヒントを与えてくれます。
危機感が高まると、人は流されやすくなる
アーレントは、危機感が高まった時、人々が「大衆」として一つの思考に流されやすくなる傾向があると説きました。介護現場でも、緊急時や困難な課題に直面すると、「とりあえずみんなと同じ意見に従おう」と主体的な判断を避けてしまうことがあります。しかし、それが続くと、現場の多様な声が失われ、個々が持つ大切な視点や能力が活かされなくなる危険性があります。
多様性があるからこそ、公共性を大切に
アーレントは、多様な人々が生きる社会においては「公共性」を確保することが重要だと述べました。介護現場における「公共性」は、個々の声や意見を尊重し、それを統合してより良いケアや環境を作り上げることに他なりません。スタッフ一人ひとりの考えや利用者さんのニーズをしっかり共有し、意見を出し合うことが、現場を豊かにし、利用者さんにとって最適な支援を提供する鍵となります。
「任せる」だけではなく、主体的に関わる
アーレントはまた、「大衆が独裁者に任せ切ることは、自らが悪を犯している」と警鐘を鳴らしました。介護現場でも、「リーダーや上司が決めた通りに動けばいい」という姿勢に陥ると、現場の活力や多様性が失われてしまいます。どんな立場であれ、一人ひとりが主体的に意見を持ち、議論に参加することで、現場全体が活性化し、利用者さんへのケアもより質の高いものへと進化していきます。
まとめ
多様性があふれる介護現場では、流されるのではなく、一人ひとりが主体性を持ち、意見や考えを共有することが大切です。アーレントが指摘したように、公共性を保ちながら多様な声を統合することで、互いを尊重し合う現場文化が生まれます。それが、利用者さんにとってもスタッフにとっても、より豊かで心地よい環境を作り出すのです。
