27.流行に踊らされるな


2025.04.29 |投稿者:神内秀之介

介護の現場でも、新しい機器やサービス、トレンドのケア手法が次々と登場します。「これが最新のケア技術です」「これを取り入れれば効率が上がります」と聞くと、つい取り入れたくなる気持ちも湧いてくるでしょう。しかし、本当にその流行が必要なのか――フランスの哲学者ジャン・ボードリヤールの視点を借りて、一歩引いて考えてみませんか?

効用よりも「流行」が先行する世界
ボードリヤールは、商品が本来持つ「使えるかどうか」という効用よりも、「流行」という記号としての価値が重視される現代社会を指摘しました。介護現場でも、「最新のICTツール」や「新しいケア理論」が登場すると、ついその流行に飛びつきたくなることがあります。しかし、そのツールや方法が実際に現場で役立つかどうかを見極める前に、ただ流行に乗るだけでは、本当に必要なケアの本質を見失ってしまうこともあるのです。

「差異」を追い求める危うさ
ボードリヤールは、商品が「他の商品との差異」を強調することで消費される現象を指摘しました。例えば、介護業界でも「この施設は最新の設備を持っている」という差別化を図るために、必要以上に流行を取り入れることがあります。しかし、流行を追いかけることばかりに気を取られてしまうと、目の前の利用者さんにとって本当に必要なケアや、人の温かみに基づいたサービスが薄れてしまう危険性があります。

流行を活かすには「本質」を見失わないこと
流行そのものが悪いわけではありません。新しい方法や技術が現場の負担を軽減し、利用者さんの生活を豊かにすることも確かにあります。しかし、それが本当に役立つかどうかを見極めるためには、流行に飛びつく前に「これは私たちの現場にとって必要か?」「利用者さんのためになるか?」という問いと向き合うことが重要です。流行を取り入れるかどうかの判断基準を「差異を付けたいから」ではなく、「本質に合っているかどうか」で決める姿勢が大切です。

まとめ
介護の現場では、新しい技術や方法が次々と登場しますが、流行に踊らされるのではなく、その本質や実効性を冷静に見極めることが求められます。ボードリヤールが指摘したように、「差異」や「流行」を追い求めるだけでは、本当に必要なものが見えなくなってしまいます。目の前の利用者さんと現場の本質を軸に、賢く流行を活用していきましょう。


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