介護現場での「実存的交わり」


2025.04.24 |投稿者:神内秀之介

介護の現場では、利用者さん、家族、同僚との意見や価値観の違いに直面することが少なくありません。時には否定的な見解がぶつかり合い、職場や人間関係に分断が生じそうになることもあるでしょう。しかし、ドイツの哲学者カール・ヤスパースが説いた「実存的交わり」の視点を取り入れることで、こうした分断を乗り越え、相互理解を深めるヒントが得られるのではないでしょうか。

否定的な視点が分断を生む
人は、意見の衝突や価値観の違いに直面すると、つい「なぜ分かってくれないのか」と否定的な考え方に傾きがちです。例えば、ある利用者さんのケア方針について意見が分かれた時、「その考え方は間違っている」と一方的に否定してしまうと、そこに分断が生まれ、関係性がぎくしゃくしてしまいます。この否定的な見方を手放すことが、理解への第一歩です。

お互いを認めることで生まれる「実存的交わり」
ヤスパースの哲学が示すように、相手を否定するのではなく、「その人にはその人の背景や考え方がある」と認めることが、真の相互理解に繋がります。介護の現場では、利用者さん一人一人の生き方を尊重するのと同じように、同僚や家族の考え方にも耳を傾ける姿勢が大切です。「違いを受け入れる」ことが、分断を超えてより良いケアを実現するための鍵となります。

愛しながら戦う――相互理解のプロセス
相互理解は、決して完全に意見が一致することを意味するわけではありません。ヤスパースは、「愛しながら戦う」という言葉で、このプロセスの重要性を説きました。つまり、相手を尊重しつつも、自分の意見を率直に伝え、意見を交わし合う中で理解を深めていくということです。例えば、同僚とケア方針について議論する際も、相手を否定するのではなく、「なぜその考えに至ったのか」を丁寧に聞く姿勢を持つことで、互いに新たな視点を得ることができるでしょう。

まとめ
介護の現場で分断を生むのは、否定的な見方ではなく、相互を認め合いながら対話を進める姿勢です。ヤスパースが説いたように、お互いを尊重し、愛しながら議論を重ねることで、真の理解と信頼が生まれます。そうした「実存的交わり」を大切にすることで、現場の人間関係はより豊かで深いものになるでしょう。


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